ご挨拶
第二次世界大戦後の復興期、その後の経済の高度成長期を支え続けて来た日本のエネルギーシステムは、1970年代の二度にわたる石油危機、そしてその後の経済の低成長期を経て、社会から求められる姿が変化しています。1990年代からの電力自由化の流れは、現在の電力システム改革に繋がり、ガスシステム改革を伴って、自由化が本格的に進行しつつあります。一方、東南アジア地域においては、経済の高成長が続く中で、社会インフラの根幹となるエネルギーシステムの構築が急務となっています。
エネルギーシステムの構築や再編成は、いくつもの相反する課題を同時に達成していく困難な作業です。日本においては、安全で、安価で、安定したシステムを再構築した上で、さらに国際社会に対する責任として、地球温暖化対策を進めることが求められています。東南アジアにおいては、地域の大国の政治的パワーへの対応と自立した経済発展という二つの目標の達成に資するエネルギーシステムが必要です。
さらに、エネルギーシステムは形づくるのに長い時間が掛かります。ひとたび出来上がると、エネルギーシステムはその社会のあり方を長期にわたって規定することになります。
このように、複数の喫緊の課題が折り重なっている困難な時期であるからこそ、歴史に学び、長期的な視点を持ち、日本および東南アジア各国において最も望ましい、持続可能なエネルギーシステムはどうあるべきかを考え、追究していくことが大切であると、私たちは考えます。
このたび「アジアエネルギー研究所」を発足させたのは、このような問題意識によるものです。エネルギー業界の専門家の方々に限らず、学界、他の産業界、メディア等を含めて広く各界から教えを頂き、考え続け、その成果を世に問い、最も望ましいエネルギーシステムの構築に向けて、微力ながら貢献していきたいと考えております。
どうか皆様のご指導、ご支援をお願い致します。
2015年12月